2019年(平成32年・令和元年)の死亡数は、約138万人、これに 対し、同じ年の公正証書遺言の作成件数は11万3137件 、自筆証書遺言の検 認件数が1万8625件で、合計すると、13万1762件になりま す。上記の死亡数と遺言作成件数は、その時期が異なるので正確に対応してい ないのですが、大まかに言えば、死亡者の約1割が遺言書を作成しているということになります。
全国の遺言公正証書の作成件数は、平成元年で約4万件でしたが、平成26年に10万4490件になり、以降11万 件余りで推移しています。
高齢化 社会の到来とともに、遺言の重要性、その効用等について、周知されてきたこ とが背景にあるといえそうです。
ちなみにイギリスでは、中世においては遺言を遺さずに死亡することは魂の救 済を受けずに死亡することを意味し、聖地への埋葬ができず、財産を領主に没 収されるという事態を招き得る、不名誉かつ忌むべき深刻な事態であったととらえられているようです。実際に2014年10月の英国弁護士会報告書では、55歳以上の6 4パーセントが作成しているとされ、日本と比較にならないほど多く作成され ています。日本においても遺産をどのように分けるか、遺言者自らの意思 を実現するとともに、相続をめぐる紛争を防止し、相続手続の円滑化を図るた めにも、更なる遺言の利用の促進が求められています。